Q&A

CCSのQ&A

全体

CO2とは?
炭酸ガスともいい、無味無臭の気体(常温、20℃程度)です。炭素を含むものの燃焼や動植物の呼吸等によって発生します。「温室効果ガス」の一種で、地球温暖化に最も寄与している物質です。産業革命以降、化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)の大量消費によって大気中のCO2濃度が増えてきており、地球温暖化による気候変動が大きな問題となっています。産業革命以前の大気中のCO2濃度は350ppm(0.035%)程度でしたが、現在は400ppmを超えています。7%程度の高濃度となるとその場所に人が立ち入るのは危険ですが、私たちの身の回りにあるガスであり、呼吸によって人体からも吐き出されます。工業用にも使われており、ドライアイスは二酸化炭素を固形化したものです。ビールやサイダーなどの飲料はCO2を含むことにより発泡しています。農作物にとっては、CO2は光合成を行うため必須であり、高いCO2濃度は肥料のような効果をもたらします。作物用温室では、人工的にCO2濃度高めて収穫を増やすことも行われます。
CCSとは?
「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。化石燃料の燃焼や、工業過程で副産物として発生するCO2を排ガスから回収し、パイプラインや船舶等によって輸送し、地中深くに押し込んで長期間大気から隔離することにより、大気中の温室効果ガスの増加を防ぐ技術です。
CCSは必要なの?
世界は省エネルギーや太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーの普及を進め、CO2排出ゼロの「脱炭素社会」へと向かっています。しかし、CO2の排出源となる化石燃料の使用を今すぐ止めることは困難です。また、CCS以外のCO2排出削減対策が困難な産業分野もあります。CCSは、現在使われている発電所や工場を大きく変えることなくCO2排出削減を実現します。また、大気中のCO2を直接捕集・吸収する技術と組み合わせることでCO2除去(ネガティブ・エミッション)を可能とする温暖化対策でもあります。将来の「脱炭素社会」をできるだけ早く実現するために、いま必要とされる対策と考えられています。
実施事例はどのくらいあるの?
現在、世界中で30のCCS施設が稼動しており、年間4,000万トンのCO2を回収・貯留しています。これは、デンマーク、アイルランド、ニュージーランドなど多くの国のエネルギー関連の年間排出量を上回る量となっています。よく知られた例では、1996年から実施されているノルウェーのスライプナープロジェクトが挙げられます。このプロジェクトでは北海での天然ガス掘削の際に出るCO2を回収し、年間約100万トン800m地中に貯留しており、現在もまだ運転しています。日本では、経済産業省によるCCS大規模実証試験事業(2016年~2019年CO2圧入)が北海道苫小牧市で行われ、約30万トンのCO2が地中に圧入されました。現在CO2のモニタリング作業が続けられており、CO2が安定的に貯留されていることが確認されています。
CCSは実証されていないのでは?
CCS技術は50年以上前から実用化されており、すでに約3億トンのCO2 を回収し、地下に圧入することに成功しています。
•現在、世界中で30のCCS施設が稼動しており、年間4,000万トンのCO2を回収・貯留しています。これは、デンマーク、アイルランド、ニュージーランドなど多くの国のエネルギー関連の年間排出量を上回る量である(注1)。
•ガス処理、エタノール、肥料、鉄鋼、水素製造、発電など、さまざまな排出源で商業規模のCCS施設が稼動しています。
•個々のCCSプロジェクトでは、よく知られた挫折もあったが、これらの問題は他の大規模産業プロジェクトが直面するものと変わりはなく、全体としてCCSは技術的・経済的に実行可能であることが証明されています。
CCSは安全ではないのでは?
CO2の回収、輸送、貯留は十分に規制されており、経験的に安全であることが証明されています。
米国では1972年以来、CO2を安全かつ確実に輸送しており、その50年の歴史の中で死亡者はゼロです(注2)。
万が一、輸送中に漏れたとしても、純粋なCO2が大気中に放出されても、引火性や爆発性はなく、人体への毒性もないため、壊滅的な放出(非常に急速かつ大量に)がない限り、人体へのリスクはほとんどありません。
一度地下に埋めたCO2が漏れる可能性は非常に低いと考えられています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、適切に選択・管理された地中の貯留層に貯留されたCO2は、99%の確率で1,000年以上そこに留まるとされています。
CCSは高すぎるのではないか?
CCSのコストは、導入の幅が広がり、政策や財政的なインセンティブが追加されるにつれて、急速に低下しています。
CCSは、新しいビジネスモデルや、政府や民間企業による研究開発の増加により、近年急速に普及が進み、コストも低下しています。現在、世界で190以上のCCS施設が開発されており、スケールメリットによりコストはさらに低下すると予測されています。
IPCCは、CCSを導入しない場合、世界の気候変動目標を達成するために平均で138%のコスト増になることを明らかにしました(注3)
CCSは化石燃料産業を長引かせ、世界が地球温暖化の目標を達成するのを遅らせるだけではないの?
CCSは、すでに使用されている化石燃料由来のCO2の排出量を削減し、世界をネットゼロにするために必要なツールと考えられています。
CCSは、現在ある化石燃料発電設備からの排出を削減するために、今すぐ導入できる不可欠なツールです。CCSの導入や早期廃止がなければ、石炭や天然ガスによる火力発電所は、2050年までに国際エネルギー機関(IEA)の持続可能な開発シナリオの炭素使用可能量の95%を消費する速度で、CO2を排出し続けることになるからです。
IPCCとIEAは、世界が化石燃料の消費を急速に減らし、さらなる開発を中止する最良のシナリオの場合でも、CCSが気候変動目標の達成に重要な役割を果たすという点で一致している。なぜなら、セメント、鉄鋼、化学、肥料生産など、現代社会の基盤であるいくつかの非エネルギー分野を脱炭素化できる唯一の選択肢と考えられるからです。
また、CCSは、直接大気回収(DAC)やCCS付きバイオエネルギー発電(BECCS)技術による大気からの炭素除去を支える主要な技術です。

技術

どうやって回収するの?
CO2は火力発電所や工場など大量のCO2を発生させる施設の排出ガスから回収されます。回収の方法にはいくつかありますが、広く利用されている化学吸収法では効率的にCO2を吸収する液体(吸収液)を用います。CO2を含む排ガスが吸収液と触れることでCO2が排出ガスから除去されます。次に吸収液を加熱することで、吸収液とCO2が分離し、高純度のCO2を回収することができます。
どうやって輸送するの?
CO2を輸送するには、パイプライン、タンクローリー、船舶等を利用します。パイプラインでは気体で、それ以外ではCO2を圧縮・冷却して、液体の状態で輸送します。
どうやって貯留するの?
地表や海底面から深い井戸を掘り、圧力をかけて800mより深い地層にCO2を入れます。CCSでは、CO2を貯留する場所として多量のCO2が入れやすい隙間の多い砂岩状の地層と、CO2が漏れ出さないように上部に遮蔽層と呼ばれるフタの役割をする粘土状の不透水層を有する場所が選ばれます。
どの程度完成した技術なの?
CCSを構成する回収・輸送・貯留に使われる技術のほとんどは、既に利用されている成熟した技術と言えます。例えば化学吸収法によるCO2回収は日本でも製油所で利用されていますし、工場内ではCO2パイプラインも運転されています。枯渇しかけた油田にCO2を圧入することで石油回収を増進する技術(EOR)は既に何十年かの歴史があり、地中にCO2を圧入すること自体は新しい話ではありません。CO2船舶輸送も海外では実績があります、日本では実施されておらず、より低温で安全かつ効率的にCO2を船舶輸送する技術の開発が進められています。

貯留適地

どのような場所が貯留地に適しているの?
CO2の地中貯留を行うためには、CO2を貯めるための隙間が十分にある地層(貯留層)の存在とともに、その貯留層の上部がCO2を通さない地層(遮へい層)で覆われていることが必要となります。そのような地質構造が大きく広がっていて、かつ漏れの可能性につながる活断層が見つかっていない地域が適しています。また万が一漏れた際を想定し、影響ができる限り小さくなるように、地層の条件だけではなく、地上の利用状況や海域の特性と生態系なども考慮して選定されます。
CCSプロジェクトで回収したCO2をすべて安全に貯留するために十分な場所はないのでは?
世界には十分すぎるほどのCO2貯留容量があります。
2021年CO2貯留資源カタログ(CO2 Storage Resource Catalogue)(注4)によると、全世界で14,000ギガトン以上の貯留資源が存在するとされています。IEAによると、2021年の世界のエネルギー関連CO2排出量はわずか33ギガトンです(注3)。
貯留資源は、世界のほぼすべての国で見つけることができ、CCSの世界的な展開を可能にする重要な要因となっています。日本近海の地下でも発電所から排出されるCO2の100年分以上を貯留できる地層があることが分かっています。

経済性・費用

どのくらいの費用がかかるの?
回収後、CO2を貯留する場所までの輸送距離や、地層の深さ等により異なりますが、CO2一トンあたり数千円から数万円と言われています。
誰が費用を払うの?
直接的にはCO2の排出を削減したい企業や団体が払いますが、CO2の排出削減は社会全体の課題なので、他の温暖化対策と同じように税金等様々な形で物の価格や料金に反映され、最終的には国民が少しずつ負担することになります。
貯留地近くの地域にはどのようなメリット・デメリットがあるの?
一定規模の事業により、設備設置および運転に関係する地元経済・雇用効果、用船による雇用促進、事業実施および事業見学のための人の往来による地域振興、若年層の増加などが期待できます。商業化され大規模な貯留、利用地となっていくと、メンテナンス産業の発生(雇用効果、経済効果)、CCSサプライチェーン関連産業の発生(雇用効果、経済効果)、CO2利用産業の発生(雇用効果、経済効果)商用CCS(事業収入の発生)による税収増加(固定資産税等)が期待できます。また間接的には、海域の環境モニタリングが集中して行われることで、漁場環境に関する有用なデータが取得・公開されるようになります。
デメリットとしては、調査や井戸の掘削工事を行う際の漁業への影響、海上の構造物における事故リスク発生、CO2運搬船の頻繁な通行による事故リスク発生、CO2漏洩のリスクの発生、CO2圧入による地震誘発のリスクの発生が考えられます。しかし、これらは管理可能と考えられています。

安全性・リスク

回収や輸送の途中でCO2が漏れてこないの?
CO2回収設備は、石油化学工業などの既存の工場設備とあまり変わらないので、様々な安全対策が施されている他、漏れても問題が出ないように管理されて運転されます。CO2の輸送は、産業や飲料水向けに現在もタンクローリー等で行われています。いずれも漏れる確率はゼロではありませんが、しっかり管理されて行われます。CCS事業全体を通じて、通常の産業でのCO2取扱いと同様のしっかりした管理が行われます。
地中に入れたCO2は漏れてこないの?
CO2を溜める地層(貯留層)は上部がCO2を通さない密な地層(遮へい層)で覆われており、貯留層に閉じ込められたCO2は砂礫や石粒の隙間にある塩水を押しのけて徐々にその貯留層内に広がっていきますが、上部に遮へい層があるため地表に向かって移動することはできません。2005年に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書によれば、地層を適切に選定し、適正な管理を行うことによって、1,000年にわたってCO2を貯留層中に閉じ込めることができるとしています。
CO2貯留事業では、漏れる可能性のほとんどない貯留層の選定、安全な貯留井の設計、貯留したCO2の挙動把握と海水のモニタリングを通じて漏れのリスクの対策を行い、万が一漏れた場合の対策も用意します。
地中に入れたCO2は最後にはどうなるの?
貯留層の中で長い年月を経過したCO2は、地層の隙間に安定して留まり、一部は徐々に地層を満たす塩水に溶解したり、塩水中の成分や周辺の岩石と反応して安定な鉱物を形成するなど、様々な仕組みで貯留層に固定され、安定な状態になっていくと考えられています。
万が一CO2が漏れたらどうなるの?
地上に漏れた場合、屋外の開放的な場所ではすぐに拡散し、通常の濃度近くまで薄まってしまいます。量にもよりますが、閉鎖空間や窪地に長時間漏れて、比重の重いCO2が高濃度で溜まってしまうような場合は、そこに人が立ち入ることは危険で、健康被害をもたらす可能性があります。現在、空気中のCO2濃度は容易に測定できるので、CO2が発生したり取り扱ったりする工場などでは常時濃度モニターすることで管理されます。海中に漏れた場合も潮汐や海流によって拡散し薄まっていきますが、閉鎖性で水深の内湾域で長い期間漏れ続けると、局地的な海水の酸性化により生態系に影響を与える可能性があります。
CO2を貯留する場所は、地層の条件だけではなく、地上の利用状況や海域の特性と生態系なども考慮して選定されます。
大きな地震が来たらどうなるの?
大規模地震が起きた場合、回収・輸送・貯留設備の一部が壊れる可能性があります。これまでの事例では、たとえば長岡CO2圧入実証試験の際の新潟県中越地震(2004年)や、苫小牧CCS大規模実証試験の際の北海道胆振東部地震(2018年)でも、設備に影響はなく、CO2が漏れるといったことはありませんでした。もちろん、より大規模な地震の到来にも備え、想定外ということが無いように万全な対策を行うことが大切です。
地下から漏れた場合の対策はあるの?
圧入段階で漏れた場合には、まず、圧入圧力を低下させることや圧入を停止するといった圧入管理で対応することが考えられています。
貯留したCO2が陸上や海水中に漏れてくることは「絶対に」ないのですか?
『絶対に』無いとは言い切れません。そのため、CO2が漏れずに安定的に貯留できると考え得る場所の選定や安全な圧入管理が重要となってきます。
どのような経路で漏れてくる可能性がありますか?
CO2が地下から漏れるとしたら大きく2つの経路が考えられます。一つは、CO2を圧入する井戸や周辺の既存の坑井が不良になった場合の井戸を経路とする場合。もう一つは、古い断層や亀裂を経路として、出てくる場合です。前者の場合、井戸の筒が壊れてそこからCO2がしみだして井戸の周りをつたって出てくる場合や、圧入が終了した後、井戸を封止に使われたセメントが壊れたり、劣化して漏れてくる場合が考えられます。
漏れた場合はすぐにわかりますか?
CO2を圧入する井戸や観測用に掘った井戸など、漏洩の経路となりうるポイントについてはセンサー等で常時監視することにより速やかに異常を検知します。それ以外に漏洩に繋がるような経路は考えにくいですが、万が一に備えて事業海域の広い範囲にわたってCO2のバブルや水質の変化について定期的に調査を行う計画です。また事業全体では地層内のCO2の広がりや圧力変化の監視がしっかり行われています。そこで異常が見つかれば海洋の監視体制を強化します。
漁業関係者の方や海域によってはダイビングされる方など、日常的に海を利用される方からのお寄せいただく「何らかの異変」も漏洩発見に繋がりうる重要な情報と考えられています。事業者が環境モニタリングを行った結果を広く公表するだけでなく、一般から情報をお寄せいただける仕組みつくりも検討しています。
どのくらいの量なら漏れても問題ないのですか?
近年、大気中のCO2が海水に溶け込むことで引き起こされる「海洋酸性化」が世界的にも深刻な環境問題として懸念されています。海水中のCO2濃度が大きく上昇すると石灰の殻を持つ海洋生物の成長などに影響が出ることも分かってきました。海域によってはサンゴなどが顕著な影響を受けると言われています。このような影響の現れるCO2の濃度については膨大な実験データが報告され、環境省などではデータベース化されています。
一方で、どのくらいの量(または速度)で漏洩が起こると、そういった影響の懸念される状況までCO2濃度が上昇してしまうかについては一概に言えません。外海にオープンで潮汐や海流で海水が速やかに交換する海域では、モニタリングで検出できないような小規模の漏洩によって生物への影響が懸念されるほど海水中のCO2濃度が上昇することはありません。一方、閉鎖的で狭い湾や海底の局所的な窪地のような海水交換の極端に悪い場所では比較的規模の小さい漏洩でも、その狭い範囲内でCO2濃度が上昇することが懸念されます。事業海域の中にこのような場所が存在する場合には、重点的なモニタリングが行われる予定です。
漏れた量が少なくて環境に影響がないとしても、漏れる経路が存在するということになります。
そのような経路を完全に塞ぐことはできますか?
設備において漏れる経路が存在する場合は、部材の交換や修理などが考えられます。また、地下に掘削した坑井については、22で示した方法などの対策が考えられます。一方、地中の断層や亀裂など地下に存在する漏れる経路の詳細を特定することは難しく、セメント注入などの方法で、漏れる経路を完全に塞ぐということは困難と考えています。この場合の対策は、海底面の漏出している地点において、状況に応じた対策を検討することも考えられます。
大規模に漏れ出した場合に止める(塞ぐ)ことはできますか?
一般に、暴噴といった大規模に漏れ出す現象は、何らかの原因でCO2を圧入する井戸が不良となり、そこから漏れる場合が想定されます。このうち、坑井内から漏れる場合は安全装置である逆止弁が作動して、暴噴を止める機能が有ります。また、井戸をセメントなどで固めて廃坑措置を行って塞ぐ場合もあります。
地中にCO2を注入すると地震を誘発する可能性があると聞いたけど?
CO2を圧入することで地中の圧力が高まります。それにより、微小な地震動が生じる可能性があります。海外では、CO2貯留活動に似ていると言われている石油天然ガス採掘活動で、人が感じることができない微小な地震動や、まれに人が感じる地震が起こることは既に報告されています。
地震は、固い岩盤が壊れて発生します。現時点で、日本の貯留候補地として考えられている場所は柔らかい岩石でできているので、地震を起こす前に岩石が変形してしまうため、地震が誘発される可能性はきわめて小さいと考えられています。しかし、安全を期して、CO2貯留作業では常に地下の圧力を管理しながら運転されます。
環境省の実証事業における漏洩対策は?
環境省の実証事業ではまだ地下へのCO2圧入は実施されていませんが、以下のような予防と対策をする計画です。
①適切な地質評価の下、安定貯留できると考える地層に貯留する(貯留層の上位に遮蔽層が広がりを持って存在し、構造安定性を考慮し、既知の活断層から一定の離隔距離を保って貯留域を設定し、貯留する)
②圧入井での温度・圧力計測や海防法に定められるモニタリング等を行って、圧入による異常検知に努め、漏洩・漏出懸念のある異常を検知した場合には、圧入管理などの操業ルールに従い、圧入圧力を低くする、圧入停止する等の措置を行い、必要に応じて漏洩地点での対策を検討・実施する。

法律

CO2を管理する法律はあるの?
現在国内でCCSを明示的に規制する唯一の法律として、2007年にCCSに対応することを目的として改正された「海洋汚染防止法」があります。海洋汚染防止法は、海底下へのCO2貯留による海洋環境への影響を防止することを目的に、事業者に事前の影響評価やモニタリングを義務付けており、苫小牧におけるCCS大規模実証試験も海洋汚染防止法の許可の下で実施されています。
海洋汚染防止法の規制が及ばない、CO2分離・回収設備や、回収したCO2の輸送に関しては、他の産業と同様に、排出源となる設備を対象とする法律や、高圧ガス保安法などの既存の法律が適用または準用され、CCS事業は安全に実施されます。
一方で、温暖化対策としてのCCSの推進及びその商用化のためには、CCSを対象としたより効率的な規制体系(事業法)が必要だという意見もあり、現在経済産業省を中心に新しい規制枠組みの検討が進められています。

その他

2017年の韓国で発生した誘発地震のようなことは起こらないの?
韓国で2017年に発生した地震(マグニチュード5.4)については、調査の結果、自然地震ではなく近隣の浦項(ポハン)地熱発電所が触発したものであったと結論付けられました。浦項の地熱発電は高温岩体地熱発電と言われる非従来型の方式で、地下の硬い高温岩体に水を注入し、その水圧で岩石を破砕して人工的な割れ目を作り、そこに地表から水を送り込んで蒸気や熱水を取り出す(水圧破砕)技術です。
確かに地下に流体を圧入することで地層が破壊され微小な地震が発生するケースは知られていますが、亀裂を人工的に発生させる地熱開発の水圧破砕とは異なり、CCSではあらかじめ地層の破壊圧(壊れる最小の圧力)を調査し、地層の圧力がそれを超えないように管理しながらCO2を入れていきます。また、浦項では発電のためにその固くて割れやすい地層(花崗岩)に水を送り込みますが、CCSは流体を通しやすく割れにくい地層(砂岩)にCO2を圧入する点も異なります。さらに、運転中は誘発地震への対策として、地震計によるモニタリングなど、十分な体制がとられます。
消火器から出たCO2で死亡事故が発生しているけど?
2021年4月、東京都新宿区のマンション地下1階駐車場において、内装業者が天井ボードの貼り替え作業を行っていたところ何らかの原因で二酸化炭素(CO2)消火設備が作動し、取り残された作業員5名が死傷する事故が発生しました。これは、CO2が閉鎖された空間に大量に放出されたため発生した窒息事故で、CO2消火設備に関する類似の死亡事故は2021年1月、2020年12月にも発生しています。CO2は不燃性であり、CO2消火設備は優れた防火設備として普及しており、今後も取扱いに注意することが必要となっています。CCSでは閉鎖空間でCO2を取り扱うことがないため、このような事故につながることは無いと考えられますが、センサーの設置や圧力のチェックにより、CO2漏れが起こらないように漏れてもすぐ分かるように管理されます。
カナダのワイバーンCCSで貯留したCO2が地表に漏れて、
野生動物が死んだという事故があったと聞いたけど?
2011年にワイバーンCCS近くの農家が貯留したCO2の漏れていて、地表のCO2の濃度が異常に上昇しており、近年野生動物がCO2の漏れのために死んでいるのではないかと、CO2濃度および同位体によるCO2の年代測定結果を基に主張する事件がありました。測定結果があるため、マスコミも一時これを取り上げ疑惑が広がりましたが、地元政府をはじめ、科学者による複数の国際的な研究グループが調査した結果、CO2の濃度の上昇も、CCS実施以前の変動の範囲であり、同位体による測定も周辺の自然のものとは変わらないという証拠が示され(漏れの主張となった測定結果は比較となる対象の取り違えが原因)、CO2は全く漏れていないという結論となりました。その後ワイバーンCCSは運転を続けられていますが、漏れを疑わせるような事象は起こっていません。
北海道胆振東部地震は苫小牧CCS大規模実証試験のせいだという意見を聞いたけど?
2018年9月に発生したM6.7の北海道胆振東部地震後、科学者らが参加して同年に行われた「苫小牧CCS実証試験に係わる課題検討会」では、苫小牧CCS大規模実証試験のCO2圧入(2016年~2019年圧入)による地中圧力上昇の震源断層への影響がなかったか、シミュレーションと実データにより検証しました。シミュレーションではCO2圧入地の圧力上昇による、30㎞離れた震源位置での応力(物体に⼒を加えた結果、物体の内部で⽣ずる⼒)変化は、常時自然に発生している地球潮汐力による地殻への圧力の変化の 1/1,000 程度と計算されたことや、苫小牧の、圧入開始以来、地震後までCO2圧入地点近傍ででは微小振動は検出されていないことから、CO2圧入と地震との関係を示すデータは確認できないという結論となりました。
新潟県中越地震は長岡CO2圧入実証試験せいだという意見を聞いたけど?
長岡CO2圧入実証試験ではCO2約1万トンを2003年から2005年にわたって約1100mの深さの思想に圧入しました。圧入実施中の2004年10月にM6.8の新潟県中越地震が、さらに圧入終了後の2007年7月にM6.8の新潟県中越沖地震が発生しており、試験圧入プロジェクトと中越地震の関係について懸念する意見がネット上で表れ、国会でも質問が出されました。しかし、地震の震源が圧入場所から数十km離れた、地中圧力変化の及ばない場所であったことや、「地中に水を注入し、そこで地中にあった鉄ないし鉱分と水が接触した結果、水素が発生し、地中深くで滞留をすることによって水素原子が自身で核融合を起こして、それが地下爆発につながっているのではないか」という科学的に無理のある理由が付けられていたため、深く検証するまでもなく、科学的には因果関係がないという結論となりました。
他の温室効果ガスにはどのようなものがありますか?
地球を暖める毛布のような役割をする温室効果ガスには、CO2以外にメタンや亜酸化窒素、フロン類があり、合わせて日本が排出する温室効果ガスの内10%近くを占めています(2020年の値)。この中でメタンや亜酸化窒素は農業畜産業で排出される割合が多く、排出を削減することが難しいため、温室効果ガス全体での排出ゼロを目指すカーボンニュートラルの目標達成には大きな障害となっています。このような温室効果ガスの存在も、ネガティブエミッション(負の排出:除去)による温室効果ガスの排出の相殺を必要とする理由となっています。
以前CO2を海に注入する海洋隔離という方法を聞いたことがありますが、どうなっていますか?
CCSの目的は、工業プロセスなどから排出されるCO2を大気に放出される前に回収して、大気から隔離することにあります。歴史的に見れば、その隔離先として、まず提唱されたのは海洋で、世界的にも様々な検討が行われ、IPCCが2005年に出版したCCSに関する特別報告書にも、「地中貯留」および「海洋隔離」の章が設けられています。
海洋隔離には様々な方式が提唱されていますが、その基本的な考え方は、大気の50倍以上にも上る膨大な炭素貯蔵能力有しながら、自然のメカニズムでは海洋表層が抵抗となり人為的なCO2排出に追いつけなくなっている吸収能力を、海洋の表層をバイパスして海洋深層へCO2を送り込むことによって加速しようとするものです。
しかし、当初は海洋隔離を追求していたノルウェーのStatoil社が海底下地中貯留であるスライプナープロジェクトに成功したことや、海洋がシャンパンになるといった意見に代表されるような科学的でない理由により21世紀になって殆どの研究開発活動が中断されたままになっています。特にわが国のような周囲を深い海に囲まれ、地震に対する懸念の払拭できないような国においては、海洋隔離を見直すべきであるとの意見も存在しています。

引用文献

(注1)IEA Atlas of Energy
(注2)https://dualchallenge.npc.org/files/CCUS-Chap_6-030521.pdf
(注3)Intergovernmental Panel on Climate Change, 2014: Climate Change 2014: Synthesis Report. Contribution of Working Groups I, II and III to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Core Writing Team, R.K. Pachauri and L.A. Meyer (eds.)]. IPCC, Geneva, Switzerland, 151 pp
(注4)https://CO2storageresourcecatalogue.com/